昭和時代からの漫画界をリードしてきた大御所漫画家のひとり、楳図かずおさんが亡くなりました。
88歳でした。
楳図かずおさんといえば何といっても恐怖マンガのパイオニアとして知られていましたが、長い活動期間を通じて少年もの、少女ものをはじめ、SFやギャグなどさまざまなジャンルにおいて、その重厚なタッチとストーリーで読み応えのある作品を残したレジェンド的巨匠マンガ家でした。
そこで昭和時代に楳図かずおさんの多くの傑作に接してきた世代として思い出に残る私的傑作ベスト5を紹介したいと思います。
ぜひ最後までご覧ください。
楳図かずおは俳優志望だった?
ここで楳図かずおさんの経歴を見てみましょう。
- 名前:楳図 かずお
- 生年月日:1936年9月25日
- 没年月日:2024年10月28日
- 享年:88歳
- 出身:和歌山県
1936年(昭和11年)和歌山県伊都郡で生まれた楳図かずおさんは、父親が小学校の教員をしていた関係で奈良県の山間部に移り住み、父親の転勤に伴って奈良県の各地を転々として育ちました。
楳図かずおさんにとって、この幼少期に父親から地元に伝わる伝説や伝承、なかでも奈良県曽爾村に伝わる”お亀池とヘビ女”を聞いたことがのちの創作活動の原点になったと言われています。
父方の新類縁者がすべて教員だったことから、当初は楳図かずおさんも教員を目指し、父親の意向から奈良学芸大学(現・奈良教育大学)を受験したものの不合格になったことから貸本漫画家の道を歩み始めました。
劇団ひまわりに入団
貸本マンガ家としてデビューし人気作家になっていた楳図かずおさんでしたが、その一方で1965年には劇団ひまわりの青年部に入団し、映画「兵隊やくざ」(1965)に出演するなど本格的に俳優を目指していました。
NHKの朝ドラにも出演しました。
楳図かずお作品私的ベスト5
昭和時代の少年マンガ全盛時代に恐怖マンガというジャンルを確立した楳図かずおさんの作品は、昭和時代の少年少女たちを文字通り恐怖のどん底におとしました。
一時期にはギャグマンガ路線にも走ったようですが思い出に残る楳図かずお作品をいくつか上げたいと思います。
第5位「まことちゃん」
1976年から1981年に週刊少年サンデーにて連載された「まことちゃん」は当初は、やはり数少ないギャグマンガ「アゲイン」のスピンオフ作品でした。
幼稚園児の沢田まこと(まことちゃん)と沢田一家が巻き起こす下ネタ・エロネタ満載のギャグ漫画で、SFやホラーなどのテイストも織り込んだ作品で、楳図かずおさん自身もKAZZとして作中に登場するなど荒唐無稽の作品でした。
また作中の「グワシ」「サバラ」などのギャグが当時大流行し、楳図かずおさんの作品中もっとも大ヒットした作品でした。
1980年にはアニメ映画化されました。
ただ楳図かずおさんの画風自体が独自の恐怖マンガそのもので、あまりギャグマンガとしては楽しめなかったように思います。
第4位「おろち」
不老の体を持つ超能力少女おろちが、登場人物を冷静に観察したり、超能力を使って敵と戦うという恐怖マンガというよりSF的な作品でした。
楳図かずおさんの中でも名作とされていますが長期連載でなかったことからそれほどの知名度はないかもしれません。
しかし連載当時は何より独特の世界観で印象に残る作品でした。
1969年から1970年にわたって週刊少年サンデーに連載されました。
2008年には木村佳乃さん主演で映画化されました。
第3位「ねがい」
この「ねがい」は少年サンデー1975年16号に読み切りとして掲載された作品で、知る人ぞ知るといった作品かもしれませんが、その恐怖感はとんでもないもので当時の子供たちに強烈なトラウマを与えました。
友達のいない孤独な少年が、ガラクタを集めて造った人形に願いをかけたところ本当に生き返ってしまい、とんでもない事態に陥ってしまうという物語で、これだけだとありがちなオカルトホラーのような展開ですが、とにかく楳図かずおさんの画力が強烈な恐怖を与える作品でした。
これも2005年に映画化されています。
第2位「漂流教室」
1972年から1974年にかけて週刊少年サンデーに連載された「漂流教室」は楳図かずおさんの代表作かもしれません。
楳図かずおと聞いて、まずこの「漂流教室」を思い起こす人は多いのではないでしょうか。
謎の爆発事故によって突如として学校ごと廃墟と化した未来の世界へタイムスリップしてしまった小学生たちの壮絶な苦闘生活を描くこの作品は、単なるマンガ作品にとどまらず、SF作品としてまた人間ドラマとしても世界屈指の名作だと思います。
それほどこの作品の持つ壮大な世界観と言いようもない絶望感に連載当時の小学生は圧倒させられました。
漂流教室は、日本とアメリカで二度の映画化のほか、テレビドラマやラジオドラマ、舞台でも上演されました。
第1位「のろいの館」
私的楳図かずお作品ベスト1位は、「のろいの館」です。
1967年に発表されたこの作品は、当初「赤んぼ少女」というタイトルで「少女フレンド」に発表された少女向けの恐怖マンガでした。
一般的には楳図かずお作品の中でそれほど有名でないかもしれませんが、これを読んでトイレにひとりで行けなくなったとか夜に眠れなくなったなど、当時の恐怖を思い出す中年の方が多く、恐怖度では楳図かずお作品の中でも1,2を争う名作です。
孤児として育てられた主人公の葉子は、生き別れた父親に発見され、裕福な実家に迎えられますが、そこには幼い赤ん坊がおり自分の妹だと思ったのですが、この赤ん坊のとんでもない正体が明らかになるにつれ、その屋敷内の恐るべき秘密が明らかにされるという展開はまるでサイコスリラーのように読むものをどんどん恐怖に引きずり込みます。
この作品も2008年に映画化されています。
まとめ
楳図かずおさんは、一般的には「まことちゃん」が余りにヒットしたために、ギャグマンガ作家のようなイメージがついてしまいましたが、50代以上の昭和世代にとってはやはり何といっても、恐怖マンガの大巨匠で、その作品には多くの人が恐怖を植え付けられました。
そんなレジェンドマンガ家がまたひとりこの世を去ってしまったことはとても残念ですが、これも一つの時代の終わりなのかもしれません。
楳図かずおさんの残された名作の数々をまた読みたくなるとともに、あらためてご冥福をお祈りしたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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